GREEN SPRINGS STORY

第5話

プロジェクトマネジメント×ウェルビーイング〜GREEN SPRINGSのつくりかた〜

次世代のしあわせなライフスタイル「ウェルビーイング」について、GREEN SPRINGSに関わるひとびとが、様々な角度から語っていく連載企画です。 第5回は、開発計画のはじまりから関わる2人が、街区開発のプレイヤー編成や資金調達など、プロジェクトマネジメントの舞台裏を語ります。
※この記事は2019年7月の取材を基にしています。

SESSION-1

“初めてのチャレンジ”をクリアする日々

久保:僕の今回の仕事の立ち位置的には……名前でいうと「プロジェクトマネージャー」になるんでしょうか。

横山:もうひとり、山下設計にも岸川さんというプロジェクトマネージャーがいるんですよね。役割で言うと岸川さんは建築管理的なプロジェクトマネージャーで、久保さんのカバー範囲はもう少し広い。リーシングの関係やコンテンツ寄りのことを含んでいる感じです。プロジェクトって建築管理やコンテンツ、運営体制を作ったりいろいろ仕事があります。ときにはファイナンス的な要素があったり。大きな街区の開発ですから、プロジェクトマネージャーといってもそれぞれのカバー要素がありました。

久保:僕の仕事自体も、関わる時期で随分変わってきましたよね。初期のまだ関わっている人数が少なかった時は、全体的なことを見ていたんですけど、ある時期からホテルやホールが独立して動けるようになったので、次は商業とかオフィスとかを主体に見つつなにかトラブルや問題が起こったときに対処をする。そんなことがだんだん増えていきました。

横山:例えばここのテナントの工事費がオーバーしてしまう、じゃあそれをどうしようとか。

久保:そもそも今回のプロジェクトの特徴として、オーナーもテナントさんも初チャレンジのことばかりというところがあります。どんな商業施設でもそれぞれにチャレンジは少しずつあるんでしょうけど、ここまでセオリーが通用しないのも珍しいケースかなと思います。

横山:そもそも、僕たちは商業施設と思って作ってないですよね。どちらかと言うと「ある街の路面に、その街の環境が好きな人たちが、新しいことをやりたくて集まってくるための場所」。そんな場所を作っているつもりなんです。根本的に商業施設とは違うマインドをずっと持っていたいんですよね。

久保:それは全てにおいてそうですよね。パブリックアートの話だってそうだし、イベントもそうだし。行政さんにとっても初めての体験だろうし。そういう初めてのところをクリアするためにワサワサ動いているという感じです。

久保:僕はもともと山下設計にいて、開発の立ち上げのお手伝いはしてきたのですが、従来の街区開発やこういうプロジェクトだと、パーツごとに動くことが多いんです。都市計画や街づくり、建築などに特化していて、コンテンツ化やソフト面……それこそ今回みたいにリーシングに絡む、というのはこれまでやってこなかったんです。でもそれらにも絡むからこそ、建築の方に反映させられることもある。

横山:街に限らず、工芸品にしたって一緒だと思うんですけど、なにかものを作ろうと思った時、大規模になっていくと分業制のほうが効率的になっていく。会社という営利組織でやろうと思ったら、その方が自然なんですよ。でも、もともと僕らは分業の体制もなければ、「こうしなければいけない」というセオリーがない。そういう意味では苦労もしましたけど、「一点物をつくる」という意味ではいいものが作れるたのではないかと思っています。

  • 横山友之、久保憲一
  • 横山友之
  • 久保憲一

SESSION-2

数人のスタートから1000人規模へ

横山:このまちをつくるための組織作りは、「立飛ストラテジーラボ」という会社をつくるところからスタートしました。

久保:数人から始まったプロジェクトが、今や工事関係者を含めると1000人以上。2015年は何をやるかもまだ決まってなかった時期ですよね。着工が2018年の頭ですけど、2017年まではずっと「何をどうするんだ」っていう話し合いばかりでしたから。よくぞこんな、1000人も関わるような状況まできたなと思います。

横山:個人的な話をすると、僕は基本的に自分の領域を一人のプレイヤーでやるほうが好きなんですよ。チームアップして自分が管理者やリーダーに据えられるのが実は苦手で。組織論的な理屈で人を組み合わせていく要素だけじゃなくって、人が集まると感情とか相性とかがあるし、人が増えれば増えるほどそういうことってどうしても起きてきますよね。

久保:でも今回、人が増えてくるにつれ、横山さんは節目節目でコンセプトをみんなで共有する場を設けましたよね。しかもそれを継続している。それが、チームがまとまる上で効いていると思います。

横山:僕の得意分野で言いますと、本来は会計士という資格持ちで、 M & A コンサルタントという職種なわけです。自分が得意な領域でやっている分にはどこをどうしていいか分かるし、きつい時にどうしたらそれをクリアできるかもわかるわけですよ。でもこれがリーシングだとか建築管理だとかそういうこと言われても、自分の経験とかそのノウハウでは対応できない領域が多すぎて。資金調達だけやって、と言われる方がいい(笑)。

久保:でも専門でなくても、テナントをどう集めるとかにはめちゃくちゃこだわっていましたよね?

横山:リーシングに関しては、単にフィーと期間を決めてここまでハコを埋めてくれ、といったやり方じゃダメだっていうことだけは感じていたんですよね。コンサルタントがいたとしても、自分がフロントに出て、その会社の代表者と話をしてというやり方をしないと、多分いいものも集まらないし納得もいかないし、周りで見ているみんなのためにもならないなって思ったんです。

  • 横山友之
  • 久保憲一

SESSION-3

「理念を言葉にして伝える」ことの大切さ

横山:プロジェクトメンバーが多くなるにつれて思うのは、理念みたいなものを共有するのって本当に難しいなということですね。かつて Apple にスティーブ・ジョブズがいたように、カリスマみたいな人がいれば別なんでしょうけど。単純なコミュニケーションにしても、本当に言いたいことを伝えるのって難しいじゃないですか。これが理念みたいな話になるとさらに難しいし、一回二回話しただけでは伝わらない。

久保:そういう意味では、今回、要所要所でいいパートナーが出てきてくれているんですよね。「こういうことをやりたい」というのは村山社長も横山さんも最初からぶれていないんです。でも、それをあるタイミングでPOOLの小西さんが「ウェルビーイング」という良い言葉に変えてくれた。彼らは彼らで、ここで何をやりたいかということをずっと聞いてくれて、「それってこういうことですよね」とちゃんと変換してわかりやすい言葉にしてくれたわけです。そしてマスターデザインとして形にしてくれたのが清水卓さんだったり、平賀さんだったりみたいなところがある。そういう人たちが現れることで、軸はぶれず、よりそれを太く強化できていると思うんです。僕の周りでやっているプロジェクトでも、思いは強いんだけど、いい言葉になってなくて伝わらないから、チームアップが弱くて実現できないことってことが山ほどありますから。最初は面白がってきている人もいるかもしれないけど、だんだん「そんなに強い思いなんだ」というのが共有できる、そのプロセスが見えるほど、軸が強化されていくんでしょうね。

久保:規模からすると本来はもっと大人数でやるべきプロジェクトを、今回は少ない人数で回しているんですよ。あと、このプロジェクトって、若手がとても多いんですよ。いろんなものを横断的に見られるプロジェクトですから今後どんどん育つんじゃないかな、とも思っていますし、そもそもこんなに動ける若手が多い会社も珍しいと思いますよ。
(後編に続く)

  • 横山友之
  • 久保憲一
横山友之

横山友之
株式会社立飛ストラテジーラボ戦略企画本部本部長兼執行役員。公認会計士/税理士/フィナンシャル アドバイザー。デロイト トーマツを経て独立、立飛企業(株)及び新立川航空機(株)のMBOについて助言。現在「GREEN SPRINGS」のプロジェクトを統括する。

久保憲一

久保憲一
株式会社フレームワークス代表取締役。1996年株式会社山下設計入社。建築設計部門担当として、ラゾーナ川崎プラザなどさまざまなプロジェクトに従事。2016年東京オリンピック招致活動施設計画や、2020年東京オリンピック招致活動施設計画に携わる。2015年フレームワークス設立。GREEN SPRINGSでは、開発全体のプロジェクトマネジメントを行う。