GREEN SPRINGS STORY

第2話

立飛×ウェルビーイング 〜GREEN SPRINGS誕生秘話(後編)

立飛ホールディングスがJR立川駅北側の国有地(以下、みどり地区)を取得し、開発にいたった経緯について、まさに街区を落札したその日の晩に集まっていたメンバーが改めて振り返ります。
※この記事は2019年7月の取材を基にしています。
(前編はこちら)

SESSION-1

落札から着工まで3年GREEN SPRINGSができるまで

久保:GREEN SPRINGSは今でこそ、ホールをはじめとした施設が決まりましたが、最初はなかなか何を作るか決まらなかったですよね。「オンリーワン」をやろうと、もがいていた時期が1年ほどありました。

深井:いろいろな人達に話を聞きに行ったり、そもそも「オンリーワン」という言葉をどう紐解くかが難しかったり。

久保:一般的には、シミュレーションして3年くらいかけて何を作るかを決めてからスタートするのですが、今回は通常のプロセスの逆で、用地を取得してから検討が始まりました。

深井:入札はしたものの、3年後に着工しなきゃいけないという条件がありました。着工というのはとてもハードルが高いんですよね。図面も全部できていなきゃいけないから。

久保:普通の開発とは時間のスピード感が違う。

横山:なにもない敷地にセオリーどおりの建物を建てれば良いという話ではないので、何を作ればいいかがわからない。街を変えるための取り組みであることや、都心でやっている開発とは違うベクトルであることはわかっているものの、そのベクトルがどういう着地を求めているのかはわからない、という状況でした。

久保:事例がなかったですからね。

平賀:すごく珍しいパターンだと思いますよ。普通は事業計画があって床面積を決めて用途があってと進めていく。でもそれを同時進行でやっていましたよね。

村山:私達は立川の真ん中で、立川市の1/25の敷地という社会資本を持っている責任を感じないといけないんです。アリーナ立川立飛もあのタイミングで建てたからこそ、Bリーグの「アルバルク東京」が来てくれた。これが3ヶ月遅れていたら成功していなかった。投資するタイミングというのがあるわけです。
私は経理を30年ほどやってきたので、投資案件、年間の減価償却費がどれくらいか、最終的にどういう影響を与えるかわかるから、その辺のストレスはまったくないんです。
立飛グループの経営理念は、「不動産事業を中核に、従業員の幸せを通じて社会貢献する」です。ひとりの社員を幸せにできないで、社会貢献なんかできるはずがないんです。目の前に好きな人がいて、この人をどう楽しませるのか、という視点で考えています。みどり地区にヤギを入れたのも地域貢献の一環です。国有地だった頃はただ年2回除草をしていただけなんですよ。着工までの3年間、ただ除草をしていても面白くないし、なんとかして地域の方に喜んでほしかった。駅に近い場所だからこそ、ヤギがいることで喜んでもらえました。

古澤:GREEN SPRINGSの行政協議のため、立川の建築指導事務所に行った時、私がこの場所で開発を考えていますと言ったところ、担当の若い女性の方が「え、ここヤギがいるところじゃないですか! ヤギいなくなっちゃうんですか?立飛さん、ヤギのためにこの場所を買ったかと思ってました。」と寂しそうな顔をされてました(笑)。ヤギによって、認知度は非常に高まったと思います。

  • 久保憲一

    「今回は、通常の開発プロセスと逆」
    と久保氏

  • 村山正道

    「従業員の幸せを通じて社会貢献する」
    と村山社長

SESSION-2

開業まで1年となった今、苦心していることは?

横山:経験則や過去事例ベースで片付かない事が多いんですよね。開発の責任者を担っている私自身が不動産デベロッパー出身ではないですから、日々いろいろな課題が出てきている。一言で言えば産みの苦しみ、なんでしょうけど。

久保:大体のプロジェクトは「条件があってそれを実行する」というプロセスなんですけど、今回は条件も含めてみんながフラットな関係性の中で話し合いながら決めていっています。それは大変なんだけれども、絶対にいいものができる。

横山:この開発自体の性質はトップダウン。トップの村山社長がやると腹をくくっている。その上で、肩書きとか階層ではなく、アイデアとやる気がある人と議論をちゃんとして、みんなのコンセンサスを得ながら物事を決めていく。

深井:村山社長の思いをどうやって落とし込んでいこうかとみんな思っている。

横山:僕も広い意味では金融業界の出身なので、資金の出し手である金融業界の人にこの開発が理解しづらいというのは、よくわかるんです。過去の事例から導こうとしても革新的な成功がなくて、特に環境が変化している今の時代に過去の成功例はあまりあてにならないことも多い。いろいろなディスカッションを重ねて初めて自分が腹落ちしてきたことを考えると、金融の論理からは受け入れづらいのは当たり前です。いろんな人にわかってもらうためのハードルは高いけど、わかってもらえないから放っておこう、というのは正しくないと思います。結局は成果を得るまで耐えるしかないのかも知れませんが。

平賀:価値観が激動していて、何もしないと日本が海外に食われるというリスクがあることはみんな肌感覚ではわかっている。そういうときって、やっぱり覚悟なんですよ。誰も歩いていない道を歩かないといけない。それをやっていかないとこの国がよくならない。だから今やっているんです。村山社長がおっしゃっていることは世界に通じると思って。だからいろんな業種が集まっても、そこに想いやビジョンがあって共有できれば、職種や役職など関係ない。

久保:みんな、自分の分野だけで解決することを考えず、人の文化を受け入れようと柔軟に考えていますね。

横山:GREEN SPRINGSが郊外の都市開発の成功事例の一つになれば、日本の都市開発に悩める地方行政、海外の先進国の都市も視察に来るような場所になると想定しています。

平賀:ウェルビーイング・フォーラムvol.0※、予防医学研究者の石川善樹さんの話がすごく面白かったです。21世紀の三大苦は「退屈、孤独、不安」であり、ここに来れば孤独ではない、同じ価値観を共有できる人と“一緒にいられる”という感覚を提供することが大切。単身者や高齢者が増加して、孤独や退屈が確実に社会問題になっていくなか、地域の自然や文化といった誰もが親しみやすい価値を事業の根幹に据えているGREEN SPRINGSは強いと思う。そのような時代背景を踏まえて、GREEN SPRINGSの価値を語るといいかも知れない。
※2019年6月25日に実施した、開発クリエイターとゲストを交えて、ウェルビーイングという価値観について語るフォーラム。

深井:開業後も、どうやって関心をもってこのエリアに関わってもらうかが大切なんですよね。開業後がむしろ大変だと思う。

久保:立川市の行政の中にも、これをきっかけに何かが変わるなと思ってくれている人もいるんですよね。例えば昭和記念公園だって、今は西立川駅経由で行く人がほとんどだけど、立川駅から行けるルートを作ってみよう、とか。  前に多摩信用金庫の方がつくられた資料によると、多摩を48番目の県として捉えると、だいたいいろいろなものが全国で10番目ほどで、埼玉県と同じ規模感と経済効果になるそうです。そのポテンシャルを使わないのはもったいないし、多摩を盛り上げていくというのを村山社長と多摩信用金庫さんが今後、このGREEN SPRINGSでやっていこうとしているというのが凄いですよね。

村山:将来、自分のやってきたことに関して「これは俺がやったんだ」って胸を張って子供や孫に言いたいじゃないですか。GREEN SPRINGSはそんな街区になるはずなんです。よく私が言うのは、私達は他人の評価で生きているんだと。どれだけ私達が思いを込めて作っても、他の人達が評価してくれなければ意味がない。そしておそらく、GREEN SPRINGSが認知されるには4〜5年かかると思います。でも東のミッドタウン、西のGREEN SPRINGS、そういう風に言われるときが必ず来る。目先の評価じゃないんです。あの場所に来た人が「これがウェルビーイングなんだ」と感じてくれる、そんな場所に必ずなるはずです。

横山:僕らがオレゴン州のポートランドに視察に行くように、「まちづくりを学ぶなら日本の立川のGREEN SPRINGS」となっていけばいい。そこまでいくと、立川エリアに限らず、東京の西側の不動産エリアの価値も高くなっているはずなんですよ。海外の方が「日本に来るならここは行かなきゃ」という場所になればいいですよね。単純に自分が行って気持ちよかった場所とか、美味しいものを食べられた場所って、自分の好きな人を連れていきたい、って思うじゃないですか。GREEN SPRINGSがそういう場所であってほしいですよね。

  • 横山友之

    「日々、産みの苦しみです」
    と横山執行役員本部長

  • 平賀達也

    「想いやビジョンが共有できれば、業種は関係ない」と平賀氏

  • 深井幹夫

    「開業後も関心を持ってこのエリアに関わってもらうことが大切」と深井氏

  • 古澤健児

    「地域に貢献することで会社に返ってくるものは大きい」と古澤氏

  • 集合写真
村山正道

村山正道
株式会社立飛ホールディングス、株式会社立飛リアルエステート代表取締役社長、株式会社立飛ストラテジーラボ、株式会社立飛ホスピタリティマネジメント代表取締役。1973年立飛企業株式会社入社。経理部長、取締役、常務取締役、専務取締役を経て、2010年代表取締役社長に。2012年、グループ再編化に伴い、現職に就任。地域社会に貢献するため、グループの所有不動産を、ららぽーと立川立飛、タチヒビーチ、アリーナ立川立飛と立て続けに開発。

私が思うウェルビーイング
「私は単純です。好きな人と手を繋いでいること、この感覚がまさにウェルビーイングなんだろうな、と思っています」

横山友之

横山友之
株式会社立飛ストラテジーラボ執行役員本部長。公認会計士/税理士/フィナンシャル アドバイザー。デロイト トーマツを経て独立、立飛企業(株)及び新立川航空機(株)のMBOについて助言。現在「GREEN SPRINGS」のプロジェクトを統括する。

私が思うウェルビーイング
「同床異夢であっても、みんなで大きな夢を見て、語れる場があること。
これがウェルビーイングじゃないかなと思います」

久保憲一

久保憲一
株式会社フレームワークス代表取締役。1996年株式会社山下設計入社。建築設計部門担当として、ラゾーナ川崎プラザなどさまざまなプロジェクトに従事。2016年東京オリンピック招致活動施設計画や、2020年東京オリンピック招致活動施設計画に携わる。2015年フレームワークス設立。GREEN SPRINGSでは、開発全体のプロジェクトマネジメントを行う。

私が思うウェルビーイング
「自分ではまだ実現できてないこと。これから自分で実現していく夢みたいなもので、10年後に当たり前になっている生き方。それを追求している行為そのものがウェルビーイングなのではないかと思います。」

平賀達也

平賀達也
株式会社ランドスケープ・プラス代表取締役/ランドスケープアーキテクト。都市の中で自然とのつながりを感じられる空間づくりを実践。代表実績:二子玉川ライズ、としまエコミューゼタウン、南池袋公園など。GREEN SPRINGSでは、ランドスケープのマスターデザインを担当。

私が思うウェルビーイング
「ウェルビーイングのWellは、We will。1人称じゃない、私たちの“意志”なんです。様々な人が、同じ志をもって生きていける社会が、ウェルビーイングだと思います」

深井幹夫

深井幹夫
株式会社船場CREATOR事業本部SC綜合開発研究所長。「ららぽーと立川立飛」などの企画を手がける。GREEN SPRINGSでは、街区の商業の企画、リーシングを担当。

私が思うウェルビーイング
「このGREEN SPRINGSは民間なのにすごくパブリック性(公共性があり、そのパブリック性の高い事業をあえて民間企業がやる ことにすごく意義があると思う。この場所を地域の人たちが自分のお気に入りの場所に思い、仕事仲間や恋人、友人、家族など、様々なシーンで過ごす居心地良い居場所がある場所、それが究極のウェルビーイングだなと思うんです」

古澤健児

古澤健児
株式会社山下設計 プロジェクト推進部門 事業企画部/都市計画部部長。立飛グループの開発のマスタープランを手がける。

私が思うウェルビーイング
「僕の性格上、みんなの話を聞いて、それに一生懸命応える、そのプロセスが好きなんです。このプロジェクトをみんなで一緒に立ち上げていくこと自体が僕にとっては十分ウェルビーイングだし、プロジェクトを通じていいものを作りつつ、一方で課題も出てくるかもしれないけど、それにまた応えるというのも僕にとってのウェルビーイングだなと思っています」