INTERVIEW
WERC
オランダで活動する、異なる領域を得意とするアーティストユニット。デジタルと物理の世界をつなぐことへの関心から作品が作られている。「PIXI」「LILY」「CHIRP」などのデジタル生物ファミリーが代表作。
【Q1】「Think our own well-being」というテーマをどう解釈し、作品制作に取り組んでいますか?
【A1】複雑な人工的システムの中に、自然のデザインルールを取り戻すような作品を制作しています。
私たちの都市は、全てが機能を持ったテクノロジーを中心に展開される大きく複雑なシステムになっています。テクノロジーは、私たちの環境や日常生活、例えば働き方、食生活、リラックスの方法などに影響を与えます。
私たち自身のウェルビーイングを考えると、私たちはもっと一瞬一瞬を生きるべきだと思います。何も考える必要がなく、ただ快適に感じることができる瞬間です。自然は私たちにそういった瞬間を与えてくれるのです。森を散歩したり、星を眺めたり、野原に座ってコオロギの鳴き声を聴いたり・・・。私たちは時々自然のリズムと美しさを忘れてしまいますが、ただあるもの、ただそこに存在できるもの、成長し、自然環境を作り出すもの。たとえば、ムクドリ、コオロギ、ミツバチはすべて、シンプルなルールを使って行動しています。このシンプルなルールで行動している生物が集団で行動すると、美しい複雑なシステムを作り出すのです。
私たちは、これらのシステムからインスピレーションを得てデジタル生物を作成することを目指しています。コミュニケーションの手段を提供するセンサーを備えた数百の生物を作成し、環境に耳を傾け、自律的な群れとして応答するというシンプルなルールを、それらの生物に埋め込みます。都市に自然美の感覚を取り戻させる。私たちの都市がより森林のように感じられれば、「ウェルビーイング」を感じることができるでしょう。
【Q2】作品のコンセプトを教えてください。
【A2】「TANE」はWERCによって制作された、自律的デジタルライトおよびサウンドアートワークです。このインスタレーションは、自然のプロセスとデジタルのプロセスの間にあるギャップを埋める架け橋となります。自然界で集団的行動を示す生物たちは、すぐ隣にいる別の個体に応答するという方法で高度な集団的行動を取っています。群知能と総称され、たびたび素晴らしく美しい結果をもたらします。
「TANE」の機能は、この生物学的プロセスを人工的にしたものに基づいています。全ての「TANE」には、周辺の環境やお互いに応答するために使用する一連のルールがあり、また同時にそれぞれの「TANE」には異なったルールの解釈もあるので、各個体が個性を持っています。
「TANE」は太陽が沈むとともに起床しライトが付く仕組みですが、発生する範囲と形態はその時の自然条件によって決まります。個体の取るコミュニケーションや選択は、日中に受ける日光の量に影響され、また温度と湿度も考慮されるので、結果的にパターンが変化します。充電している日中は彼らの音を聴くことができ、人々に、日没時に魔法のようなことが起こることを予測させます。
このように、「TANE」は変化する気象条件や季節にも応答します。 「TANE」は自然のリズムに従うため、定期的に訪れる人々は、「TANE」の動きを少しだけ予測することもできるようになります。
【Q3】今後の立川に期待することは何ですか?
【A3】パブリックアートや緑は、都会で生活する人々に休息と安らぎをもたらします。「TANE」は、GREEN SPRINGSの訪問者が、新しい、より魔法的で不思議な方法で豊かな緑を体験できるようにすることで、人々のウェルビーイングを高めます。この新しい体験は、GREEN SPRINGSの開発を象徴し、街区の過去と未来を結び付けます。 「TANE」は、再開発された都市を公園の緑のオアシスに統合することにより、GREEN SPRINGSのアイデンティティの一部となるでしょう。